蒔絵入門「漆器のできるまで」

漆は色々な素地に塗られて漆器として完成しますが、主な素地は木材素地です。漆器はまず専門の素地(きじ)師によって必要な形の素地をつくり、これに下地と上塗の工程が加わり完成します。下地は木の合せ口の離れるのを防ぎ、塗あがった表面に年輪等の凹凸が出ないよういつまでも塗面の美しさを保持するための工程です。下地の善し悪しは漆器の価値を左右するほど重要なものです。下地から上塗までの工程を?漆(きゅうしつ)といい漆塗をすることですが、これを専門の職業とする人を塗師(ぬし)と呼んでいます。

(3-1) 素地
漆器の素地の大半は木材を加工したもので、加工技術の代表的なものは次の4種類です。
1. 挽物(ひきもの)
欅(ケヤキ)、檜(ヒノキ)、栃、桜等の木材が使われます。轆轤(ろくろ)を回転させながらお椀や湯呑などの丸い形状の器を作ります
2. 指物(さしもの)
板物とも言います。檜、桐、アスナロ等の木材を板状に加工して重箱や文箱などをつくります。
3. 曲物(まげもの)
檜、杉などを使い薄い板を湯につけて曲げ、そのまま乾かし弁当箱やお盆をつくります。
4. 刳物(くりもの)
朴(ほう)や桂等の厚い木をのみや彫刻刀で削り出して御膳の足やスプーンなどをつくります。
その他の素地としては琥珀(こはく)、貝、珊瑚などもアクセサリー用の素地として使います。

(3-2) 髹漆(きゅうしつ)
刷毛や箆(へら)で漆を塗ることです。?漆は下地(したじ)と上塗に分かれますが下地の最も基本的で堅実な方法は布着せ本堅地(ぬのきせほんかたじ)といわれる方法で上塗の最も艶を出したのが呂色(蝋色)です。いまでも高級漆器には布着せ本堅地呂色仕上げの方法が厳重に守られています。約40工程もあり仕上がるまでに相当な日数を要します。また呂色ほどの光沢を必要としないものには真塗または立塗(たてぬり)があります。良質な漆は落ち着いた深みのある色をもっていますので塗りあげただけで仕上がりとしたものです。立塗も呂色も中塗までは同様の工程ですが立塗をするときは、上塗の漆を充分に濾し、刷毛むらのないように、また埃がつかないように平滑にぬりあげるための熟練した技術と細心の注意が必要です。

(4) 「加飾」
上塗が終われば漆器として完成しているのですが、なおその上に蒔絵、沈金(ちんきん)、螺鈿(らでん)その他の装飾を加えることを一括して加飾といいます。
ここでは蒔絵について説明します。蒔絵は平蒔絵、高蒔絵、研出蒔絵に大別されますが、されに高蒔絵を研ぎ出し複雑な効果を表現した肉合(ししあい)蒔絵が加わります。

(4-1) 平蒔絵
蒔絵はまず下絵つくりから始めます。デザインをつくり、それを薄美濃紙に写します。その髪を裏返し、焼漆を細い蒔絵筆につけ、絵の輪郭通りに薄く描きます。
紙を表返し、素地の上にあてて箆等でこすると絵が素地上に転写されます。それに消銀粉を綿につけてなでると輪郭が明瞭になります。これを置目(おきめ)といい、どの技法の蒔絵にも必ず行われる最初の工程です。置目をした後、絵漆を蒔絵筆につけてデザイン通りに極薄く描き、漆を半乾きさせ粉を蒔いたものが平蒔絵ですが多くの粉の種類があり蒔く粉と磨きの工法や回数で高級度に違いがあります。

(4-2) 高蒔絵
蒔絵に高低をつけて出来上がり時の効果を強調するために絵を盛り上げた蒔絵を高蒔絵といいます。盛り上げるための材料は高上げ用の漆や炭粉があり、その上に平蒔絵の手法で仕上げます。高上げはあくまでも効果と品位を考えて使う技法なのでただ単に高くすればよいという訳でもなく、したがって高蒔絵が上等で平蒔絵が安物と一概にいうことはできません。

(4-3) 研出蒔絵
平蒔絵場合と同様に、絵漆で模様を描き、粉蒔きをする。蒔いた後で漆を上塗して炭で絵を研ぎ出しますので地と蒔絵が同一表面になりますが品の良いものですが、粉蒔きや磨きに高い技術を要します。最後は、本呂色漆を厚く塗り、炭で研出して呂色仕上げにして終了です。

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